会議室でのドラマは、議論の中だけから生まれるわけではない。思わぬところに、ドラマが生まれることもある。
たとえばそれは、座り位置だ。
テレビ番組の会議は、通常、週一回行われる。たいてい同じ会議室であり、集まるメンバーも同じなので、回を重ねるうちに、自ずとみんなの座り位置が決まってくる。
だが、あの時は、普段とは違う会議室だったのだ。
いつも僕が座るあたりに、いつもとは違う顔があった。
その会議には二つの制作会社が参加している。いわば二つのチームが参加しているわけだ。会議の進行役から見て、いつも右手にAチーム、左手にBチームが座る。いつの間にか、そういう座り位置になっていたのだ。僕が座るのはいつも右手、つまりAチームの側だ。しかし、その日そこに、Bチームの人間が座っていた。
それを見つけた僕は明らかに戸惑っていた。そんな僕を見て、彼は笑顔で、
「入り口から近かったからさ」
いつもの会議室は進行役席の正面に入口がある。だから右に行こうか左に行こうが、入り口からの距離は変わらない。だが今日の会議室は、右手の席のすぐ近くに入り口がある。なんということだ。彼は単に入り口からの距離で座り位置を決めていたのだ。
「入り口から近かったからさ」
来る者みな、怪訝そうな顔をするなか、彼はそう繰り返した。
この日の会議が、どこか居心地が悪いものであったことは、言うまでもないだろう。
また別の会議の話である。その会議は巨大な会議で、4チームが参加し、総勢50名以上になる。
会議が終わりかけの頃、進行役が思い出したように、
「あれ、Cチームは来てないの?」
言われてみれば、毎回数人が参加しているCチームのメンバーが誰もいない。
「そこが空いていたからさ」
確かにいつもCチームが座っている場所が、ごっそり空いている。会議が終わるまで、その事態に気づかないのもなんだが、理由も告げずに大勢で会議を休むCチームもCチームである。
「誰も来てないの、Cチームは」
「来てます」
壁際の目立たぬ場所で、か細い声があがった。
「今日、ウチのみんな、別番組の収録がありまして」
「君は行かなくていいの」
「僕、呼ばれなかったんです」
なんだ、これは。新手のいじめか。
それが発覚したのも、座り位置からだ。もし座り位置が毎回バラバラだったら、Cチームがいなかったことに気づかなかったかもしれない。
まったく座り位置は油断ならない。
だから、座り位置がまだ定まらぬ、新しい番組がスタートするこの時期は、会議室に入るたび、どこか落ち着かない気分がつきまとうのだ。


