20100226ちょっとしたご縁で、ノンフィクション作家・河合香織氏の取材に同伴。その一環で後楽園ホールに久々に赴いた。


『セックスボランティア』で名を売った河合氏が、我らがボクシングの世界に紐付いたテーマで筆を揮うこと自体、大変に興味深いが、これは改めてボクシングのマイナーさを痛感する機会でもあった。日頃、こうした競技と接点を持たない河合氏からすれば、客席の多くが選手やジムの関係者で占められ、目当ての試合を終えると、メインイベントを残しつつもサッと客足が引く様子はなかなか物珍しかった模様。


もちろん、チケットがプラチナ化するほど集客する興行だって珍しくない。しかし、この日の興行は若き日本ランカーの調整試合8ラウンドをメインに据えた、いかにも“ツウ好み”の構成。客入りは決して良いとは言えなかった。


単純計算すれば、8試合で出場選手は16人。それぞれに30人前後の関係者(親兄弟、同僚、友人…etc)がつけば、それだけでもう500人ほどの客足となる。そこに僅かなマニア層や業界関係者を加えれば、ちょうどこの日くらいの人出だろう。タイトルの懸らない無冠戦興行の規模としては、まぁアベレージとも言える。


これを、同人誌的モデルと嘆くべきか。それとも、既存の関係者だけでもギリギリ保てる優良モデルと解釈すべきか。いずれにせよ、プロボクシングが持つ経済市場はとてつもなく小さいのが現実だ(もちろん、業界は新規ファン開拓に躍起になっているのだが)。


最近、イヤな話も聞いた。複数のボクサーが登場するノンフィクション書籍が、実は登場する各選手に、「1人あたり○○○冊買い取り」というノルマを課して成立させているというものだ。複数の著作を著してきた身として、ボクシング関連企画の実現に多大な苦労を要することは重々理解している。文芸作品の主役を張る稀有な経験を、ボクサーそれぞれが「買った」と考えれば、誰もが気分の良い素敵なモデルと言えるかもしれない。しかし、それならばなぜ、一部で不平不満の声が挙がっているのか…。


著者を直接知らないので、正確なことはわからない。だから実名も書名も挙げない。ただ、そこにもし、人の自己顕示欲につけ込んだ強引な手法があったなら、やはり一人の出版人として気持ちの良いものではない。物書きの自己満足ならウェブでやればいいのだ(このブログのように)。